ハンス・J・ウェグナーがデザインし、フリッツ・ハンセンが製作したハートダイニングセットは、デンマーク・モダニズムを象徴する傑作です。3本脚のチェアと円形テーブルから成るこのセットは、合理性と造形美を兼ね備えており、現在に至るまで多くの人々を魅了し続けています。特に限られた空間に最適化された設計は、当時の住環境に即した革新的な解決策でした。

チェアの最大の特徴は3本脚という構造にあります。これは不安定な床面でも安定感を保つための工夫であり、実用性とデザイン性を両立させています。さらに、ハート型の座面は円形テーブルにぴったりと収まり、セットとしての統一感を際立たせています。この緻密な設計思想は、ウェグナーのデザイン哲学を端的に示すものです。

テーブルとチェアは一体的に機能するよう考え抜かれています。6脚の椅子がテーブル下に無駄なく収まる構造は、限られた空間を有効に使うことを可能にしました。また、チェアにはスタッキング機能も備わっており、収納面でも優れた工夫が見られます。この点は、実生活に寄り添うウェグナーの姿勢を象徴しています。

素材の組み合わせにも工夫があり、オークやブナの脚とチーク材の座面を合わせることで、美しいコントラストが生まれています。さらに、背もたれの曲線は蒸気曲げの技術によって実現され、職人技と工業技術の融合が表れています。これらの特徴が、ハートダイニングセットを単なる家具以上の存在へと押し上げています。

1952年に発表されてから約12年間という短い製造期間であったため、このセットは今日では希少なヴィンテージ家具として高い評価を受けています。そのデザインは時代を超えて普遍的な魅力を放ち、芸術と機能を見事に融合させた成果として位置づけられています。ハートダイニングセットは、デンマークモダンの精神を凝縮した遺産として、今後も語り継がれていくでしょう。

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テーブル ： φ1200cm × H 700cm
チェア : W 560× D 460 × H 740 × SH 430(mm)