1950~60年代の黄金期といわれるデンマーク・モダンデザインは、簡潔なフォルムと高い機能性、そして自然素材へのこだわりによって国際的な評価を得ました。ハンス・J・ウェグナーやフィン・ユールといった巨匠が広く知られる一方で、ハンス・オルセンは個性的で独創的なデザインで静かな存在感を放っています。　　

ハンス・オルセンは、王立デンマーク美術アカデミーでコーア・クリントのもと人間工学と素材研究を学び、1950年代から70年代にかけて独自の家具を次々に発表しました。彼のデザインは、曲げ積層材や籐、チーク材などを組み合わせた「有機的で軽やかなフォルム」が特徴です。

　

その代表作のひとつが、モデル532Aロッキングチェアです。この椅子は、視覚的な軽さと最大限の快適性を両立するように設計されており、手編みの籐と軽やかなフレームが印象的です。背もたれの角度や座面の深さは人間工学に基づいており、長時間座っても快適な座り心地を実現しています。

　

1956年に最初のプロトタイプが生まれ、1963年にBrdr. Juul Kristensen社から正式に「モデル532A」として製品化されました。現代では、Warm Nordicが「Swing Rocking Chair」として復刻していますが、籐は手編みではなくなり、フォルムにもいくつかの違いが見られます。

　　

ハンス・オルセンの532Aロッキングチェアは、時代を超えて評価され続ける、機能性と造形美の粋を集めた名作です。

その優雅な曲線と包み込まれるような快適さは、今なお多くの人々に愛され続けています。