アルネ・ヴォッダーがデザインし、シバスト社が製造したサイドボードOS29は、デンマーク・モダンの黄金期を象徴する作品です。1957年のミラノ・トリエンナーレで最優秀賞を受賞し、「トリエンナーレ」という名でも知られるようになりました。この受賞はデンマークデザインの国際的評価を高める契機となりました。

ヴォッダーはフィン・ユールに学び、有機的なフォルムと柔らかな造形を重視しました。OS29の特徴的なボウタイ型の取っ手や角を落とした形状は、その思想を反映しています。さらに、非対称の構成やリバーシブルドアによって、遊び心と機能性を併せ持つ家具となりました。

製造を担ったシバスト社は、精緻な木工技術で知られるメーカーでした。チークやローズウッドなどの高級材を用い、突板や無垢材を組み合わせた仕上げは高い完成度を誇ります。ヴォッダーのデザインを具現化したのは、この工房の確かな技術力でした。

OS29は、収納家具でありながら芸術的要素を組み込んだ作品です。単なる実用性を超えて、室内空間を演出する存在となり、デンマークデザインが世界で受け入れられるきっかけを作りました。

今日でも高く評価されるOS29は、機能性と美しさを兼ね備えた「機能する芸術」として、時代を超えて輝き続けています。